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☆1獣姦のタブーが出てくる理由

2679(H31・新年号元年)年2月改稿 H27(2015)年11月11日(水)初稿
「国の大祓」(くにのおほはらへ)の問題2点
「天津罪国津罪」(あまつつみ・くにつつみ)の話になると、昔は獣姦が多かったのかと言い出す人がいて、「獣姦のタブー」についてあれこれ議論になる場合もあるのでそれについて書いときたい。
『古事記』には仲哀天皇が神罰によって不慮の崩御を遂げた後、国民の犯した罪科の類をいろいろ取り集めて「国の大祓」をしたとある。神罰を受けたのは仲哀天皇なのに、なぜ「国民の」罪科を集めるのかという疑問に答えねばならないが、それは後回しにするとして、その罪科の中の種類をあげて「生剥・逆剥・阿離・溝埋・屎戸・上通下通婚・馬婚牛婚鷄婚犬婚」とあり。原文は

取國之大奴佐而(奴佐二字以音)、種種求「生剥・逆剥・阿離・溝埋・屎戸・上通下通婚・馬婚牛婚鷄婚犬婚」之罪類、爲國之大祓而
國の大奴佐(おほぬさ)を取りて、「生剥(いけはぎ)・逆剥(さかはぎ)・阿離(あはなち)・溝埋(みぞうみ)・屎戸(くそへ)・上通下通婚(おやこたはけ)・馬婚牛婚鷄婚犬婚(うまたはけうしたはけとりたはけいぬたはけ)」の罪の類ひを種々(くさぎさ)(ま)ぎて「國の大祓」をなして

とあり。このうち前半の「生剥・逆剥・阿離・溝埋・屎戸」は天津罪(あまつつみ)、後半の「上通下通婚・馬婚牛婚鷄婚犬婚」は国津罪(くにつつみ)に属するものだが、天津罪も国津罪も全部のリストがあがってるのではなくて、選抜されてあがっている。なぜ全部でなく、一部が選ばれている(一部が落とされている)のかは説明が必要だが、それは後回しにするとして(全部のリストは延喜式の『大祓詞』にある)、天津罪の方が重罪だという説もあれば、反対に国津罪の方こそ重罪だという説もあり、なぜ二つに分かれているのか、両者の違いは何なのか、この「天津罪・国津罪」なるものがどういう意味をもち、いかなるものなるのかをめぐって、実に多くの多様な議論があって、簡単でない。

「畜犯せる罪」とは
とまぁそこまではいいとして、この日にたまたま話題になってのは、国津罪の中の「馬婚牛婚鷄婚犬婚」。『大祓詞』では「畜犯せる罪」(けものおかせるつみ)とあり、これを細分化して表現したのが『古事記』の「馬婚牛婚鷄婚犬婚」で同じ事をいっており、獣姦のタブーのことだというのが通説だ。『大祓詞』の「畜犯せる罪」を、獣姦のことではなく自分が飼っている動物が犯した罪のこと(飼い主である人間がその罪を受けること)だという説もあるが、その場合は「馬婚牛婚鷄婚犬婚」とは別々の罪ということになるので、「馬婚牛婚鷄婚犬婚」の方は相変わらず獣姦説でしか解釈できない。
ここに獣姦がでてくるからといって、「昔はこういうの普通にやってたんかのー」等と思ってはならない

神話や民話の中の人獣婚
ギリシアや日本もそうだがタブーとはされない人獣婚や近親婚は、多くの場合、神話か民話の中での話である。神話の場合それは遠い時代の神々の行為であって人間世界のことではない。民話の場合それは昔々知らない時代の話か、遠いどこかの知らない土地での話かのどっちかであって匿名の主人公による教訓話や寓話になっている(起源としては神話の崩れたものではあるのだが)。つまりどちらも現実にはありえない話か、少なくとも滅多にないことという前提になっているのである。江戸時代の春画にでてくるエイ(鱏)タコ(蛸)も、いうなればマンガ(空想譚)であって現実ではないが、一つ問題としては魚介類とやっちゃうってのはここでいういわゆる獣姦のうちに入らない可能性もある。
ningyoandtako.jpg
↑江戸時代の春画、人魚と蛸(作者不明)。クリックで拡大w

獣姦は2種類ある
獣姦を日常的にやってる社会などというのは未開部族にもない。人間の嫁よりも簡単に済むとなるとその社会は崩壊するからだ。非婚化のすすんだ現代で虹嫁が重宝されるのをみれば理屈はわかると思う。おそらく原始時代にはなおさらなかったろう、原始人は現代人より本能が発達してるってことでは良い意味で動物に近いだろうから。動物は同種でしか交尾しない。牛は馬鷄犬と交雑しないし、鶏も馬牛犬と交雑しない。本能の壊れた文明人だからこそ変態になれるんであって、変態性欲とは、一種の「知性によって歪められた性欲」なのである。「知性によって歪める」といっても2種類あり、一つは完全にタブーが解禁された情況で本能の壊れた人間が性欲を追求した場合の変態、これはかなりの程度、恵まれた生活を維持できる先進国にしかない現象で男女ともにあり、好きでわざわざ人間より動物を好む性向。もう一つは男にしかない現象で、人間の女性のかわりに動物を使うもの。これは脳内で人間に変換してるという意味で「知性によって歪める」といってるわけだが、この場合、好きで動物を選んでるのはなく、出来れば女とやりたいのだが、やむをえず動物で済ましてるというケース。
いずれにしろ、世界史上、世界のどこでも異端的行為(少数者の行為または反社会的行為)とみなされる獣姦それ自体は存在した。存在したからこそこれを禁止するタブーも旧約聖書の『出エジプト記』をはじめ、世界中にあるわけだ。

獣姦が多発する環境とは
前述の通り獣姦には「人間の相手がいるのに好きでわざわざやる男女」と「本当は女とやりたいのだが、やむなく動物をかわりにする男」の2種類あるといったが、前近代では後者がほとんどだろう。有名なところでは大航海時代に西洋の船乗りたちが食料を兼ねて生きたヒツジやヤギを船に乗せて飼っていた。このヒツジやヤギで発散してたわけ。あとはインカ等の遊牧民の男性は家畜をつれて人間社会から長期間隔絶されるので、その間、家畜のヤギやリャマで済ましたという。これらの例でも「必ずやってた」わけではないが、かといって「稀な話」というわけでもなく、どれぐらいの割合で頻発してたのかその度合いがわからないのでモヤモヤする。しかし「女性がまったくいない情況に男性が長期間おかれる」という情況は同じである。
これからすると、植民地や新規の開拓地などでも、女性の少ない情況なのだから多発するのではないかと推定できる。
植民地でも新規の開拓地でもないところで、似たような情況がありうるかどうか考えると、領土に比して人口過剰な情況というのが考えられる。人口が順調に伸びてしまうと、田畑が分割相続されて農民は貧農へ転落していく。かといって一括相続すると、相続できない多数の人間があぶれる。人口が増大傾向にある社会というのは国内が平和で経済発展期にあたることが多く、経済発展期というのは同時に貧富の差が拡大する時期でもある。昔は一夫多妻はごく普通のありふれた話だから、勝ち組の男は奥さんを何人もかかえることが出来る。負け組は人間の嫁が手に入らない。夫婦生活を営むに必要な資産がない。「畜犯せる罪=馬婚牛婚鷄婚犬婚」が男の問題であって女が関係ないのは、一夫多妻制があるからだ。

同性愛と近親相姦は?
獣姦にはしる前にホモにいくだろう、とも当然考えられるが、ホモはさして問題でない。というのは、古代では(というか前近代では)日本だろうが海外だろうがほとんどの地域では同性愛に寛容な文化圏が多かったから。ただ、同性愛も人間同士のつきあいだから、あまりに性格に問題のある人間は、同性が余ってても相手を確保できない。ホモでもレズでも立派な人間はいくらでもいるってことはありえるのでそれだけでは罪とされないのである。が、異性からも同性からも、とにかく人間から嫌われるやつが獣姦にはしってるのならば、それは人格的に問題があるからお祓いの対象となる、つまり性格の悪さが穢れの一種とみなされてるわけだろう。
「上通下通婚」は近親相姦のことだが、『大祓詞』では同じことが「己が母犯せる罪・己が子犯せる罪・母と子と犯せる罪・子と母と犯せる罪」と、くどくどしく言い換えられている。これだと「母と息子」だけが問題視され、「父と娘」は度外視されてるような印象を受ける。だが前述のように「男があぶれる」という人口問題(もしくは一夫多妻という婚姻制度の問題)としてみれば、男はそもそも嫁がいないのだから娘が存在せず(父にならない)、女は(一夫多妻制だから)結婚相手の男が不足すること自体がない(父を夫の代用品にする必要がない)わけなのである。そしてこの母子相姦は、病理としては同性愛と獣姦の中間段階と考えられる(同性愛は格別に病気というわけではないが人口のアンバランスという環境によって強要された場合を一種の社会病理と仮定)。つまり他人に相手にされない(同性愛もできない)問題児でも、家族からはやむなく許容してもらえる、または家族からは(出来が悪いほど)特に愛されるということはよくある。その家族も死に絶えて(もしくは家族にすら見捨てられて)獣姦しか残らなくなる、という順番なのである。
もし古代日本が一夫一婦制に拘った社会で、一夫多妻が厳格に禁じられていたら、「己が母犯せる罪・己が子犯せる罪・母と子と犯せる罪・子と母と犯せる罪」は「己が親犯せる罪・己が子犯せる罪・親と子と犯せる罪・子と親と犯せる罪」と書かれたところだろう。実際に「父と娘の近親相姦」という例も多少はあったからこそ『古事記』では単に上通下通婚(おやこたはけ)と書いてるのかも知れないが。

原因は人口問題
話を戻すと、近親相姦や獣姦が社会問題となるぐらいなんだから、当時の日本は人口過剰だったのではないかと思われる。
当時の日本(特に九州)が人口過剰だったと思われる件については、「三韓征伐」の頁に書いたのでそちらを参照。
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どこから見ても平凡な、一介の町人です。

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